糖尿病とは

糖尿病というのは、元々は、尿のなかに糖分が含まれていることから名付けられました。1674年、イギリスの臨床医学者であるトーマス・ウィリス氏は、当時ヨーロッパで奇病とされていた多尿症の研究を行っており、尿にどのような成分が含まれているかを知りたくて、患者の尿を舐めてみたのだそうです。その多尿症の尿は甘かったそうで、それが糖尿病が確認されたきっかけだと言われています。

正確には、糖尿病とは、糖質(血糖)を調節する役割を果たすインスリンという膵臓から分泌されるホルモン量が不足していたり、インスリンによる作用が不十分であることが原因で、常時、血糖値が高い状態になる病気のことを言います。血糖値が病的に高い状態・・・それが糖尿病なんですね。先ほど、トーマス・ウィリス氏が、多尿症患者の尿に甘味を感じた・・・と触れましたが、血糖値が高くなることで、尿のなかに糖が排出されることになるわけですから、尿が甘いのは当然のことなのです(ただし、多尿症=糖尿病というわけではありません)。

具体的に、どうやって糖尿病を発症してしまうのか・・・ですが、食事で摂取したパン・米・果物等は、胃で消化・分解され、腸でブドウ糖へ変換されます。そして、そのブドウ糖は腸から血液へ流れていきます。それと同時に、膵臓ではインスリンが製造され、血液のなかにインスリンが放出されます。つまり、血液にはブドウ糖とインスリンが含まれることになります。細胞膜にあるインスリン受容体とインスリンが結合すると、ブドウ糖は細胞のなかへも入っていくのですが、そこで初めて細胞が栄養(ブドウ糖)と摂取することができるんですね。ブドウ糖は細胞のなかへ入り込みますから、血中のブドウ糖の量は減少することになりますし、それと同時に血糖値も下がるため、正常な血糖値を維持することができます。これが健康な人の状態ですね。

しかし、糖尿病の場合は、ブドウ糖が細胞の中へ入っていくことができません。原因としては、膵臓からのインスリンの出が悪い・インスリンが元気ない・インスリン受容体の元気がない・・・が主に考えられます。膵臓からのインスリンの出が悪いというのは、これは膵臓機能に問題があるということです。通常、食物を摂取すると血糖値は上がるのですが、その上がった血糖値を下げるために膵臓がインスリンを製造して、血液のなかにインスリンが分泌されるのですが、膵臓が疾患があるなど正常に機能していない場合や、膵臓が疲弊していると、インスリンの生産性が悪くなり、摂取した食物の量に対して、十分な量のインスリンを製造することができなくなってしまうのです。そうなってしまうと、細胞膜のなかへ入れるブドウ糖の量には限りが出てしまいますので、血糖値は上がったまま下がらない状態になってしまう・・・ということになります。そして、インスリンが元気ない・インスリン受容体の元気がないというのは、インスリン自体は膵臓から必要な量が製造されているというのに、インスリン・インスリン受容体がきちんと作用していないことを言います。本来、インスリンは細胞膜のインスリン受容体が結合することで、細胞内にあるブドウ糖輸送担体という物質が、細胞膜上へ移動し、それによってブドウ糖を細胞のなかへ取り込むように働きかけることができます。しかしこれは、インスリン・インスリン受容体が正常に作用している場合のことえあって、インスリン・インスリン受容体が正常に作用していないと、インスリンとインスリン受容体は結合しなくなってしまいます。そうなると、ブドウ糖輸送担体は移動もせず、ずっと眠ったままの状態になります。つまり、細胞膜上へ移動してブドウ糖を取り込みに行かなくなるんですね。腸から血液へ流れていったブドウ糖は、ずっと血液のなかにいることになりますので、当然、血糖値は高くなります。

ただ、血糖値が高いとひとことで行っても、無症状の状態もありますし、喉の渇き・尿の量が多い・・・といった著しい状態もあります。更に、意識障害・昏睡状態に陥るなどの重篤な症状になることもあります。いずれにしても、これらの症状をまとめ、かつ、血糖値・ヘモグロビンA1c(糖化タンパク質のこと)値が一定基準を超えている場合は、全て糖尿病となります。糖尿病は、血糖値が高いことが原因で起こる症状もありますが、長期に渡って血糖値が高い状態が続くと糖化反応を起こしてしまい、それによって体内の微小血管が少しずつ破壊され、目・腎臓などの様々な臓器に入内な障害を及ぼしてしまう可能性があります。重大な障害とは、糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・・・の微小血管障害などです。いわゆる合併症ですね。現在、日本全国には、糖尿病患者、そして糖尿病の予備群がおよそ2,210万人いると言われています(2007年現在)。当然、医療機関で糖尿病治療は行われていますが、その治療目的のほとんどは、その合併症を防ぐことにあるようです。